狐の難産を助けた産婆への礼
どんな伝承か
ひどい雨風の夜、語り手の知る腕のよい産婆の家に、真夜中、笠をかぶった担ぎ手たちが押しかけた。寝ていた産婆は駕籠に押し込まれ、どこかへ運ばれた。着いたのは松林の中の御殿のような屋敷で、立派な若い女が難産に苦しんでいた。脈をとると手は細く毛が生え爪が伸びていて人ではなく、見回せば皆着物で人を装っているが口がとがり耳の立った狐ばかりだった。それでも気の毒に思って懸命に手当てし、無事に男の子が生まれた。多くのごちそうと銭を出されたが、蛙や蛇の類だろうと手をつけず包んで持ち帰ると、どれも本物だった。狐でも助ければ必ず礼をするものだという。
原典より
なんぼか雨風のひんで(ひどい)夜だったてんがのう。—— 村上市史 民俗編 下巻(村上市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村上市史 民俗編 下巻(村上市史)
『村上市史 民俗編 下巻』は、新潟県村上市の市史の民俗編から、口承の節(伝説・世間ばなし・謎とことわざ)を抜き出したものである。地名・神社・寺や仏・地蔵・水・人・動植物・塞の神・杖の跡に分けた伝説と、狐や河童、火の玉、山の神などの世間ばなしを、土地の言葉の語りのまま採集地を添えて収める。義経が跳び越えた一跳山、三面川の小助島、岩船の大火など、村上市内の土地に結びついた話が中心である。