盗人を立たせなかった城玖寺の地蔵
どんな伝承か
夜明け前の山道を、盗んだ叺を背負った五郎作という男がふらつきながら歩き、寺の石段にたどり着いて腰を下ろした。追っ手を恐れつつ一息ついていると、背後から名を呼ぶ声が二度したが、振り向いても誰もいない。荷を背負って立とうとしても、どうしても立ち上がれない。振り返ると石の地蔵が五郎作を見つめていた。五郎作はもう悪事はしないと平謝りし、叺を地蔵の足元に放って逃げ帰り、三日三晩うなされた。数日後、叺を返そうと戻ると叺は消えており、寺の坊さんに打ち明けると、持ち主にはもう返したと諭された。以来、地蔵の周りはいつもきれいに掃き清められ、今も城玖寺の山門、白山権現社の前に地蔵が立っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
住田町史 第6巻 (民俗編)(住田町史)
『住田町史 第6巻(民俗編)』は、岩手県気仙郡住田町の町史の民俗編から、伝説の節を抜き出したものである。地名・石や岩や水・長者や旧家・社寺や祠堂の四つに分けて、山姥のような老婆と和尚の大股・小股、石にされた姥、河童の頼んだ手紙、櫃割長者の大蛇、座敷わらしなどの言い伝えを収める。世田米・上有住・下有住の集落や山に結びついた話が中心である。