千駄栗毛が連れ去った長者の娘
どんな伝承か
昔、長者に一人の美しい娘があった。娘は年頃になると、毎日、馬屋の千駄栗毛のところへ通い始め、やがて娘は馬に恋をしているという噂が立った。怒った父は馬を殺して、その皮を桑の木に吊した。娘は部屋から出なくなる。ある晩、嵐が吹いて長者の屋敷を黒煙が包み、千駄栗毛は奥の部屋に寝ている娘を背に乗せて空へ飛んで行った。長者は捜させたが行方は知れず、巫女に祈ってもらうと、娘は元気だが十月十六日まで待てという。その日の夕方、西の空の雲が屋敷の上に来て箱を投げ落とした。中には二匹の虫がいて、桑の木へ持っていくと葉を食べて大きくなり、真白な繭をつくった。長者はこの繭で糸を取り、絹の反物をつくったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。