オシラの本地を語る祭文
どんな伝承か
「オシラの本地」と題する祭文である。鎌倉長者の一人姫が十二、三のとき、花見の帰りに厩へ下り、三百三十三匹の馬の中に栴檀黒毛という見事な馬を見た。額に「ひ」、右の目の上に「月」、左の目の上に法華経の文字が七流れあるという相好で、姫は、人間の身であれば添い臥そうと思って御殿へ帰る。すると栴檀黒毛は南枕になり、七日七日のあいだ草も水も食わずに悩んだ。長者が巫女と博士を呼んで占わせると、栴檀黒毛は姫君を恋うているという。畜生に恋われるとは何事かと長者は怒り、八人の舎人に命じて馬を引き返させ、いぬき七本の元にその頭が収められた。以後、桑の葉で養う虫の名の由来や、繭から糸を取り機を織る次第が唱えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。