賽の河原の月夜に舞う白衣の天狗
どんな伝承か
明治十年代のころ、大峰や葛城など全国の霊山で修行を積んだ川村宗順という名高い行者がいた。ある年恐山にこもり、賽の河原で三日間の断食行をしたときのこと。三日目の夜半、湖に中秋の名月が映えるのに打たれて一心に祈っていると、目の前に白衣の不思議な人物が現れ、長いあいだ宙を舞った。月光に照らされたその舞は言葉にならないほど見事だった。宗順は後々までその姿を思い出しては、あれこそ本物の天狗だったと人に語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。