障子に映った見知らぬ娘の影
どんな伝承か
恐山では、真夜中に地蔵堂の扉が開く音や寺の流しで水仕事をする音がすると、信徒の誰かが亡くなると言われた。昔、田名部のある男が妻と恐山の寺に泊まり、夕方湯から部屋へ戻って戸を開けようとすると、障子に若い娘の影が映り、衣ずれの音までしたかと思うとすっと消えた。二人が寺男の詰め所に知らせると、軍人あがりの寺男川村が、誰も通していないはずだと部屋を調べに行った。障子を開けた拍子に何かが肩に触れた気がしたが、中には誰もいなかった。翌日、隣室に泊まっていた岩手県から来た老婆のもとへ娘が死んだという電報が届き、娘の霊が部屋を間違えたのだろうと話されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。