二階で倒れ廊下に立った寝間着の男
どんな伝承か
ある晩、小山内薫は珍しく早く帰り、今夜は徹夜で仕事をすると言って白い寝間着に着替え、母屋の二階の十五畳の部屋にこもった。うたた寝はしないでと妻に念を押されていた。しばらくして揺り起こされると、彼は仰向けに畳へ倒れていたという。妻の話では、床に就いて十二時を過ぎた頃に障子が開き、廊下に自分と同じ白い寝間着の人が立っていた。声をかけても返事がなく、飛び起きると障子は開いたまま姿は消えていた。急いで二階へ上がると、当人がうなされて倒れていたのである。ほどなく一家は高輪の家を引き払った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。