死産後に精神を病んだ娼妓よしえ
どんな伝承か
熊本市生まれの女・村木よしえ(二十三歳)は、四五ヶ月前に九州のX町の曖昧屋千鳥屋に抱えられたが、すでに妊娠六七ヶ月であった。やがて死産し、産後の肥立ちが悪く気鬱で精神が変になったため、千鳥屋は持て余し、周旋屋の亀田お品に無償で回した。お品は狐憑きのような彼女を、日蓮宗の祈禱所である長元寺に連れて祈禱を受けさせていた。祈禱の最中、よしえは「兄さん、許してください、私が悪かった」と恐ろしい声で泣き叫び汗みずくになるが、済むとけろりと忘れる。事情を探りに来た寺島刑事が問うたが、女は身元も兄の所在も一切語らなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、中村古峽が著した変態心理学の論集である。二重人格、夢遊病、狐憑きや神隠し、催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教などの神憑りや心霊術を迷信として論じ、迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収める。著者自身の被験者や大本教訪問の見聞を例に引き、変態心理の解説から催眠術、宗教批判、犯罪の実話へと進む順に並べる。