切符を集めに行くと消える老婆
どんな伝承か
大正七、八年の夏、今は浜松町一丁目となっている港区の宇田川町で、赤電車の幽霊騒ぎが起こった。銀座方面から来て宇田川町どまりとなる市電に一人の老婆が乗っており、車掌が切符を集めに行くと忽然と消え失せてしまうというのである。噂は広まり、宇田川橋のたもとの不動堂や川枡亭という寄席のあたりへ、連日お祭りのように見物人が押し寄せた。問題の赤電車は幽霊見たさの客で新橋辺から満員になるほどで、幽霊を見たという者は結局いなかったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。