アワビ貝の杯と青山の花野の怨霊
どんな伝承か
山名持豊が姫路城を治めていた一五世紀なかばのことである。姫路の西郊、青山に太田垣小殿佐という者が住み、花野という愛人を置いていた。ある日、太田垣が家臣をもてなす席へ、山名家伝来のアワビ貝の杯を並べた。一合入りから一升入りまで揃っているはずが、二合入りの一枚だけが見当たらない。太田垣は花野を責めたが、実は日ごろ花野に横恋慕していた出入りの郷士、笠寺新右衛門が杯を隠し、罪を着せたのだった。笠寺は主人に代わって花野を縛り上げ、責めさいなんだ末に殺してしまう。以来、青山の屋敷には毎夜のように怨霊が現れたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。