土地を買った隣家に憑いた生霊
どんな伝承か
高知県のある部落で、P氏の隣に住むN夫人の家は、夫の若死にや盲目の娘たちの死が続いて困窮し、田畑や宅地を手放した。それを買ったP氏が隠居屋を建てると、のちに妻が婦人病を患い、易者から人の生霊が憑いていると言われ、P氏はすぐにN夫人を思い浮かべた。数年後にはP氏自身も頭痛に苦しみ、またもN夫人の生霊と判じられた。島根県能義郡のある村では、暮らし向きがよくなった家の婦人が、一軒おいた隣の狐持の老婆に障られたとされ、安来市のある部落では田の境界争いに負けた未亡人が相手の家の嫁に憑いたと噂された。憑く者と憑かれる者は、親戚でない近所同士であることが多いという。
原典より
* 社会的潤滑油* 家単位の憑きもの現象* イギリスの妖術との比較* 憑く人の特徴(日本)* 憑く人の特徴(外国)* 憑かれる人の特徴* 社会統制の機能* 不幸を説明する機能—— 日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。