紋付で座るか平服かを問う弔いの席
どんな伝承か
V氏の姪が嫁いだ先の姑が、その年の一月に亡くなった。姪は自分の親には知らせなかったが、V氏は人づてに聞いて葬儀へ足を運んだ。筋の側では彼が来るとは思っていなかったらしく、驚いた様子だったという。〈クロ〉の家の弔いに出た以上、自分も同じに見られてもやむを得ない、とV氏は言う。婚礼と葬儀の場では今も区別が根強く残り、紋付で座るか平服で座るかが、正式な参列かどうかを分ける目印になる。それでも昭和生まれが所帯を構えるようになって、ずいぶん変わってきたとも語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。