義兄に助けを求めた義妹A子の生霊
どんな伝承か
高知県大方町(現黒潮町)のある部落で、昭和三十二年の夏、B氏の妻が二十日ほど病臥し、定期的に震えに襲われた。夜、知らぬ間に蚊帳の外に出て寝たり、寝たまま用便をするなど奇妙な様子だったので、B氏は女の祈祷師を呼んだ。祈祷師が家に入るや、婦人に憑いていた生霊が乗り移り『義兄さん、早くA子を助けて』と大声で叫び、家計が苦しいと訴えた。A子はB氏の義妹で、嫁ぎ先の商売が失敗し貧困に陥っていた。祈祷によって夫人は全快したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。