後妻を取り殺した先妻の鬼女
どんな伝承か
青木秀三郎の後妻おたへは、先妻おるいの死霊に毎日毎夜つめかけられた。死霊は是非とも後妻を取り殺して妄執を晴らそうとし、そのあさましさは筆にも言葉にも尽くせぬほどであった。姑はこれを苦にして病み、夫婦の安寧のためにと一日一万遍の念仏を欠かさなかったが、おたへの病は日ごとに重くなる。臨終の際、おたへは秀三郎に、自分が死んだ後は決して後妻を迎えてはならない、迎えれば家が滅ぶと言い残した。死霊は、後妻を添えるなら千人まで冥途へ引きずってゆくと恐ろしい形相で座敷を駆けまわったという。おたへは念仏ばかりを唱え、二十歳で世を去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話
『実説妖怪新百話』は、著者名の記されない明治の怪談集である。本郷駒込曙町の世外庵に住む天保初年生まれの老翁の勧めで、門下生三十六人が百物語の会を開き、武家の妻の執念、化物屋敷、狐狸の化かし、前妻のたたり、漁師の幽霊の帰宅などを、自分の見聞や親から聞いた話として順に語る。冒頭の「百物語の開筵」で会の趣向を述べ、続いて会津・三河・江州・若狭・盛岡・八戸などを舞台にした話を題ごとに並べる。