線路に現れた狐の化け汽車
どんな伝承か
明治二十四年九月一日に東北本線が上野と青森の間で全通し、その前後の数年ほど、沿線では狐が汽車に化けるという話がしきりに語られた。宮城では小牛田のあたりから陸中和賀にかけて、この手の話が多かったという。おぼろ月の夜、平野を走る機関車の前方に、火を吐き汽笛を鳴らす列車が正面から迫ってくる。急に止めれば相手も止まり、そろそろ動けば相手も動く。手を焼いた機関手の一人が、ある晩は目をつぶって突っ込んでみたところ、衝撃はまるでなく、向かいの機関車は消えてしまった。翌朝、線路を見回った者がその地点で大きな古狐が数匹轢かれて死んでいるのを見つけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。