群れを率いて七味温泉に浸かった大猿
どんな伝承か
大正三年十一月、長野県上高井郡高井村の七味温泉に、ひどく大きな猿が湯治にやって来た。白峰の山奥から出てきた何十年も生きた猿らしく、体重は十四貫ほどもあると見られた。毎夜、湯治客が寝静まると共同浴場に入り込み、二、三時間ものんびり湯につかっている姿が見られ、人々は気味悪く思っていた。二十五日の夜半には、この大猿が七、八十頭の群れを引き連れて現れ、湯に入るものもいれば人家を荒らすものもいて大騒ぎとなった。翌日、猟師の山崎袈裟一が村人数十人と積雪を冒して山へ分け入り、五貫目あまりの猿を四頭仕留めたという。
原典より
そして毎夜、湯治客の寝静まるのを見すまして、共同浴槽に入りこみ、二三時間も好い気持そうに、ゆっくり入湯している姿を見かけたので、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。