牛蒡種の妻に仕える夫
どんな伝承か
野崎寿の報告に見える、美濃恵那郡のある村の話。この村にも牛蒡種と呼ばれる家筋の者が住んでいるという。その家から妻をもらった男は、妻にまったく逆らえない。ひとたび妻の怒りを買えば、夫はたちまち病気になってしまうからである。そのため牛蒡種の女を妻にした夫は、やむなく洗濯も針仕事も自分でこなし、まるで奴隷のような暮らしに甘んじることになるという。著者は、牛蒡種でなくとも男の地位はしだいに下がりつつあると皮肉を添えている。
原典より
美濃恵那郡某村にもこの種類の者居住し、あるいはその家から女を妻に貰った男などは、妻に対して如何ともすることができず、…—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。