守江ノ浦に沈み船幽霊となった侍
どんな伝承か
慶長五年、大坂方は関ヶ原で敗れた。大坂方についた島津家の船も、豊後国の守江ノ浦で攻められて海底に沈んだ。その一人、中村新右衛門尉なる侍は船幽霊となり、この海上を通る船に取り憑いたそうだ。『狗張子』に見える話である。幽霊船はもうれん船ともよび、夜中、船のまわりの海の中から桶を貸してくれと不気味な声がする。静かだった海は荒れ、船頭たちは桶の底を抜いて海に投げる。額に白い三角巾をつけた死装束のものがその桶を拾い、船の中に海水を注ぎ込むが、底が抜けているので水はたまらない。底を抜かなければ船は沈められてしまうという。
原典より
その一人中村新右衛門尉なる侍は船幽霊となり、この海上を通る船に取り憑いたそうだ。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。