読経の灯りに集まった螢の一家
どんな伝承か
秋田の仙北郡大曲町に川ノ目という船着場がある。上納米などをここから舟で運び出したところだ。江戸の中頃、諸国から商人などが多く集まり、川ノ目には旅籠や土蔵が軒を並べた。土蔵を破り旅籠に火を放った盗人工藤九郎兵衛は捕えられて追分で磔刑となり、女房と子二人は生き埋めにされた。その夜から九郎兵衛は火の玉となって飛び、女房と子どもはその火が恋しく、自分たちも光が欲しいと念じて螢に化身した。三匹抱きあって飛ぶのでとても明るく、気味悪がる者が多くなった。庄屋たちの頼みで船通寺の住職円坊が九郎兵衛の首塚の前で三部経を供養すると螢が集まって読経の灯りとなり、以後火の玉は絶えた。
原典より
秋田の仙北郡大曲町川ノ目と藤木村の境は上総川で仕切られている。—— 東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承