アメリカ人を驚かせた小林仙人の術
どんな伝承か
明治二十六年、東京に来たアメリカ人が、麻布区谷町のある屋敷に小林という仙術家を招いた。小林はふんどし一つで屋根に登り、合掌して祈念を凝らすと、庭の七人のアメリカ人がくわえた煙草に太陽から火を下ろしてつけてみせた。次に屋根の斜面を転がり落ちる石を気合いひとつで空中に止め、狐を出せと言われると、庭の松の根もとに白狐を三頭現してみせた。のちに小林はアメリカ人と北海道を旅し、六、七十間もある谷にさしかかると、ひと跳びで向かいの丘の頂へ飛んで戻り、さらに一人のアメリカ人の背を打つと、二人そろって矢より速く谷を跳び越えたという。
原典より
次に屋根の傾斜面を転落する石を、気合と共に空中で停止をさせて見せた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。