牛のほえる声で吉凶を告げる吉備宮の釜
どんな伝承か
著者は最近テレビで、行者が昔ながらの書き割りの前で釜鳴りという不思議な秘法を演じるのを見て、懐かしいお化けの仲間として忘れがたいと記す。『本朝語園』によれば、備中国の吉備宮には吉凶を占う釜があった。参詣人が運勢を知りたいときは、釜の前に供え物をし、神官が祝詞を唱えてから釜の下で柴を燃やす。運が吉なら釜は牛がほえるような音で鳴り、凶なら鳴らないという。水も湯も入れていない釜が火を焚くと鳴り出すので、昔の人はそれを化け物の仕業だと思っていた。
原典より
水も湯も入れない釜が、火をたくと、鳴り出すという。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。