白山の社を回り続けた貝売り
どんな伝承か
大竹から来た明け貝売りが、横山を売り歩いていた。白山のあたりに見慣れない新しい家があり、門口から小娘が出てきて貝を買うと呼び止めた。妙だと思いつつ近づいたとたん狐に化かされ、貝売りは白山の社のまわりをぐるぐると売り歩き続けた。そこへ遊びに来た大勢の子どもが、籠の中が木の葉ばかりなのを見て、狐にだまされた人だと背中をたたき、ここは白山の社だと教えた。ようやく我に返って籠を見ると、貝はすべて取られて木の葉ばかりになっており、驚いて帰ったという。
原典より
大竹より明け貝売一人来り、横山を売り廻りける処に、白山の辺りにて、日頃見ぬ新宅ありて、門口より小女出て明貝を呼ければ、不思議ながら行くと思へば、忽狐に魅かされ、白山の社の周囲を売り廻りける。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。