関戸峠を閉ざした金の網
どんな伝承か
芥川何某が小瀬に用事があり、月の出た夜更けに出かけた。途中、関戸峠という所を越えようとしたとき、急にあたりが真っ暗になり、行く手に金の網が現れた。驚いて前後を見回すと、前も後ろも左右も、空にまで金の網が張りめぐらされていて身動きがとれない。ただごとではないと思った芥川は、その場に座り込んで目を閉じ、心を静めた。しばらくして目を開けると、上下四方の網はすっかり消え、月は明るく北極星が輝いていたので、急いで帰ったという。
原典より
然レドモ本文 小瀬ノ人ニ非ルガ如シ。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。