軒下の小便壺に落ちた幼子
どんな伝承か
明治の初め頃であろうか、関戸村の某の家は市にあった。出口の広い軒の側に小便壺があり、在方ではどの家にもこの設けがあった。某の家に二歳ばかりの児がいて庭に這い出したが、親も内の用事に手が離せず、ちょっとの事と思って追って出なかった。しばらくして出て見ると小児の姿が見えない。驚いて尋ねると、軒下の小便壺に逆さまに落ち込んでいた。やれとて引き上げたが既に息が絶えており、どうしようもなかった。人手の足りない家にはこれくらいの不注意は常にあることだろうが、この児の不運というべきだと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。