雨の前夜に現れる達磨面の火
どんな伝承か
達磨面の火と呼ばれる怪火は、晩春から初夏にかけて、蒸し暑く今にも雨が降り出しそうな日の前の晩にたびたび見られた。筆者自身も何度も目にしたという。その正体にはいろいろな説があって定かでない。ある人の話では、この火はときに丑三つ時ごろから吸江淵に現れ、そこで大勢の仲間を呼び寄せては集まったり分かれたりしてさまよい歩き、夜がまだ明けないうちにまた山へ帰っていくのだという。
原典より
達磨面の火は暮春より初夏の頃、天気蒸して将に雨降らんとするの前夜、度々見ることを得。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。