馬舎に響いたバケツの音と病農夫の夢
どんな伝承か
大正七年の秋、盛岡市に住んでいた著者は、高等農林学校の農場で働く農夫甲にこの種の現象があったと聞き、さっそく出向いて本人から直接聞いた。ある夜、甲が勤務として馬舎の中の自分の番所で寝ていると、馬の寝ている所で突然バケツを転覆したような音が聞こえた。目を覚まし、飼料のバケツを馬が倒したのだろうと思って眺めたが、馬は安らかに眠っていた。二、三日して、同じ学校で働き病気で臥せっていた農夫乙の家へ見舞いに行くと、家人が、病人が眠りから覚めて、今学校の馬舎へバケツを届けてきたと言ったと話した。甲は夜中の幻聴がそれだったと感じ、乙は数日後に死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊学講義(変態心理学講義録)(小熊虎之助(述)・日本変態心理学会・心霊学・変態心理学)
『心霊学講義(変態心理学講義録)』は、文学士小熊虎之助が述べ、日本変態心理学会が講義録として出した心霊学の講義である。精神感応、交霊、透視と未来の予知、心霊物理現象、騒ぐ幽霊などを、英国の心霊研究の調査例や講者が盛岡で確かめた事例を引きながら、詐術や錯誤を見分ける心理学の立場から論じる。全十章で、こっくりさんなどの自働現象の説明に始まり、終章で長尾夫人や三田光一の念写実験を検討し、巻末に内外の参考書解説を付す。