波の上で包丁を叩き落とした白衣の老人
どんな伝承か
那覇市の金城米子さんは、神ダーリーを含めて十八年にわたる苦しい修業の末、暮らしにも疲れ果てて死を決意した。子どもたちの食事代にも事欠いたある夜、包丁を懐に那覇港近くの波の上海岸へ出かけ、人影が絶えたころ腹を突こうと構えた。その瞬間、白い衣の老人が目の前に現れて包丁を叩き落とし、子どもたちの姿が脳裏にくっきりと浮かんだ。泣き崩れた彼女に神の声が家へ帰れと命じ、帰宅すると水を七回かぶり、塩を入れた水で体を洗って仏壇の前に座れと告げた。翌朝、見知らぬ女性が相談に訪れ、神の声が告げる判示を伝えると礼金が差し出され、それから客が増えていったという。
原典より
白衣の老人が眼前に現われ、包丁を叩きおとしたのだ。—— ユタと霊界の不思議な話(月刊沖縄社) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ユタと霊界の不思議な話(月刊沖縄社)
『ユタと霊界の不思議な話』は、月刊沖縄社が編んだ、沖縄の霊能者ユタについての取材記録である。那覇など都市地区の有名なユタへの取材をもとに、持ち込まれる相談、ユタになったいきさつ、マブイと霊界の考え方、十二支寺や拝所巡拝の意味を問答の形で記し、依頼者の体験談も添える。序章の体験談と四つの話に続いて、ユタを母に持った子の手記、霊示を書き取る人の話、有名霊能者百二十人の一覧、用語説明を収める。