数時間で醜く変貌した人形の顔
どんな伝承か
稲川淳二らが伊東市の宿に着くと、部屋は妙に静まりかえっていた。そこへ人形使いが人形を抱えて入って来て、あいさつもせず布を解き始めると、つい数時間前まで美しかった人形の顔が、目が大きく飛び出し口が醜くひきつれ、どす黒く変貌していた。翌日稲川が東京へ帰ると、人形使いが「人形に食べ物あげてきたからね」と訪ねて来て気味悪がられた。その秋、人形使いは別の人形で公演したが終演後行方をくらまし、後日髪が真っ白になった姿で「もう大丈夫」と要領を得ないことを言った。後日テレビ収録でこの話をした際も、部屋の壁の影が動いたり、稲川の腕時計が突然飛んだりする怪異が起きた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。