腐乱死体が浮かんだ橋のたもとの寒気
どんな伝承か
五年ほど前のこと、ある川の橋の近くに来ると急に背中が寒くなって気味が悪くなり、語り手は急いで橋を渡るようになった。夜はその道を通るのが怖く、運転手仲間も茶飲み話で同じことを言っていた。雪が消えた四月半ば、その橋のたもとに腐乱した死体が浮かび上がって大騒ぎとなった。埋められていた遺体が出てきたのだという。犯人は皆が見当をつけていた男だったが、その男は雪の降るころ神奈川県で自殺していた。橋には地蔵が祀られて供養されたが、今も通りたがらない人が多く、交通量はとても少ないという。
原典より
今から五年程前(昭和五十四年頃か・註/松谷)、或る川の橋近くになると急に背中が寒くなり、何となく気味悪くなり急いで橋を渡る。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。