宇頭間の峠で消えた女と濡れた百円玉
どんな伝承か
岡山県倉敷市の児島宇頭間の峠での話である。「赤旗」の県南部ルートの配送をしていたMさんは、岡山駅に午前一時頃着く列車の新聞を車に積み、県南部のポストに下ろして回っていた。昭和五十二年のある日の午前三時頃、宇頭間の峠を児島味野方面へ走っていると、峠の手前で女が手を上げている。悲しそうな顔で乗せてくれというので助手席に乗せた。しばらく走って次のポストに近づいた時、ふと助手席を見ると女がいない。座っていた所には百円玉が一つ落ちていて、それが濡れていた。Mさんはそれきりルート下ろしの仕事をやめた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。