香椎のアパートで胸に乗る顔のない女
どんな伝承か
福岡教育大に赴任した森田信義氏夫妻は、香椎という所の四階建アパートの三階に住んでいた。ところが奥さんが毎晩うなされる。女がやってきて胸にのしかかるという。夫が起きて番をしていると、若い女が奥さんの胸にのしかかっているのをまざまざと見た。姿かたちははっきりしているのに、顔だけが定かでなかった。お祓いをしてもらうと、その女は近所の踏切で自殺した人らしく、結婚問題がこじれたのが原因だという。ちょうど顔の部分を轢かれていたそうだ。お祓いの後、女は現れなくなったが、一週間目に今度は夫の夢に現れ、顔がはっきりしていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。