仏壇の前に先回りした金貸しの幽霊
どんな伝承か
明治二十六、七年ごろ、博多の中市小路に立川という仮名で伝わる男が住んでいた。やくざあがりで全身に入れ墨があり、大きな屋敷に独りで金貸しをしていたが、ある夜、裏の井戸で首を吊って死んだ。屋敷を買って移ってきた主人が夜中に便所へ立つと、井戸のあたりに青白い火がちらつき、死んだ男の影が寂しげに立っていた。供養しようと仏間の襖を開けると、先ほどの幽霊が先回りして仏壇の前に座っていた。一家は翌日引っ越し、その後も住む人が居着かなかったが、四、五年後にかまぼこ屋が開かれて繁盛し、ゆうれいかまぼこと呼ばれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。