亡者が注文した百人分の膳
どんな伝承か
仙台城下に三原屋という酢屋があった。近江から流れてきた主人は何を商っても失敗続きだったが、書物好きの老人に酢屋を勧められ、山林を売った金を用立ててもらって河原町に店を開き、繁盛して仕出しも兼ねた。三年後、老人が金を返してほしいと訪ねてくると、主人は借りた覚えはないと番頭に追い出させた。老人は釈迦堂裏の杉で首を吊り、亡者の仲間に入った。やがて亡者の客が法事の仕出しを注文し、三原屋は百人分の膳を正楽寺へ運んだ。飲み食いののち、今日の法事は首を吊った老人のだと告げられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。