湯田川の旅籠を過ぎる亡者の列
どんな伝承か
庄内の湯田川の旅籠に、新庄の喜三郎という男が泊まった。日暮れから雨となり、往来は絶えた。客は喜三郎ひとりで、主人に誘われて囲炉裏を囲み盃を重ねていると、表でガヤガヤと話し声がした。この旅籠から先は出羽三山へ行くばかりで人家はないのだが、と主人は首をかしげる。声は立ち寄らずに通り過ぎ、表へ出ても誰もいなかった。翌晩も、表からガラガラと車の軋む音と女の泣き声がした。客は静かに、あの話し声は亡者が出羽三山へ行くのだ、車の音は亡者を乗せようと曳く音、女の泣き声は今通るという合図だと言い、宿賃を払って声の後を追って去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。