暗い穴の先の花園から戻った老婆
どんな伝承か
大正八年ごろ、六歳だった語り手は祖母に連れられてよく寄席へ通い、そこで親しくなった老婆が家に来て話したことがある。老婆は病気で寝ついたとき、周りの者が手を握ったりするのが面倒で、死んでもかまわないと思っていた。気がつくと暗い穴のような所を歩いており、風がひゅうひゅうと吹いていた。みなの呼ぶ声がうるさいので振り切って進むと、明るい花園に出た。よい所へ来たと思っていたが、呼ぶ声がいっそう強くなり、仕方なく戻った。すると目が覚めて、自分は床に寝ていたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。