花の向こうで手招きする女
どんな伝承か
昭和二十八年頃、津山の語り手の母が大病で生死の境をさまよった。快方に向かってから母が話したところによれば、床に伏していると窓の外一面に花が咲いていたという。名は判然としないが菜の花のようだったと母は言う。その花の向こうで美しい女が笑みを浮かべて手招きするので、体は辛かったが懸命にそこまで歩み寄った。ところが女は同じだけ離れた場所へ移り、また手招きしている。あのまま女について行っていたら死んでいたかもしれないと母は語った。母はその後回復し、今も健在である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。