三途の川の手前で呼び戻された祖父
どんな伝承か
昭和十九年の冬、山本郡藤琴村での話。長患いしていた七十四歳の祖父が危篤になり、子や親戚が枕元に集まった。雪の深い年で、迎えに行った医者が来ないうちに祖父は息が絶えた。子どもたちが水で唇をぬらしていると、祖父は急に息を吹き返して目を開け、みなを不思議そうに見た。祖父は、山を越え石の原っぱを越えて行くと川があり、向こう岸にきれいな花が一杯咲いていた、川を渡って行こうとしたら遠くから呼ばれて夢から覚めてしまった、と残念そうに語った。親戚の婆さんはそれを三途の川だと言った。祖父はその翌日に亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。