転落事故の父が見た阿弥陀如来
どんな伝承か
昭和三十五年、松戸市の父が妹を乗せて自動車で買い物の帰り道、橋のカーブで車ごと川へ転落した。救急車が来ぬまま心臓は止まり、家族が死を覚悟する中、父は夢を見ていたという。美しい花の咲き乱れる川原に立ち、川向こうで知人たちが手招きして笑っている光景を何度も見た後、霧の中に阿弥陀如来がぼんやり浮かび、やがて姿を消すと同時に病院の白い天井が目に入った。事故から三日後にようやく意識を取り戻したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。