座敷で幼児の群れに阻まれた産婦
どんな伝承か
遠野の佐々木の友人の妻が自ら語った話。初めての出産が重く、この女はいったん息絶えた。当人の心持ちはむしろさっぱりとしていて、どこかへ急がねばならない気がしたという。道を足早に進むうち、気づけば広く明るい座敷にいた。次の間へ通ろうと襖に手をかけると、数え切れないほどの幼子が周りを取り巻き、行く手をふさいで通してくれない。ところが引き返そうとすると、幼子たちは両側にさっと分かれて道を空ける。それを何度も繰り返すうち、遠くから自分を呼ぶ声がかすかに届き、しぶしぶ後戻りをした。我に返ると近所の者に抱きかかえられ、家中が大騒ぎになっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。