盆に鼻歌を残して去った夫
どんな伝承か
盆に夫の墓参りをすませた女の話。寒い日で、家に戻ってテレビを眺めながらうとうとしていると、いつの間にか夫がそばに座っていた。普段着の着物姿である。女が、今いる所はどんな場所かと尋ねると、夫は機嫌のよいときの口ぶりで、よい所だと答えた。もう帰るのかと重ねて聞くと生返事をし、朝だ朝だ、朝日が昇る、と軽く鼻歌を口ずさみながら裏口から出て行ったという。坂下のあたりでは死んだ者は物を言わないと言い伝えるのに、夫ははっきりしゃべった。女は不思議でならないと語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。