妻の怒りで床につく坂下の亭主
どんな伝承か
トリツキスジの力は、とりわけ女に強く現れると語られてきた。恵那郡の坂下村では、この筋の家から妻を迎えた男は妻に頭が上がらないとされ、ひとたび妻の機嫌をそこねれば、夫はそのまま床につく病人になってしまうという。そのため、この筋の女を女房にした亭主は、やむなく洗濯も針仕事も自分で引き受けることになる、と言い伝えられていた。野崎寿が『郷土研究』四巻八号に報じている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。