口寄せで知る姉の懐への訪れ
どんな伝承か
明治のころ、五箇の敏あんにゃは、婚家の姉が病篤いというので若松まで町医者を頼みに出かけた。折悪しく医者は重病人の往診で不在だったため、明日まで待つことにして町に泊まった。寝つかれずうとうとしていると、女の人が入ってきてスーッと懐へはいり、急に寒気がした。峠を八里も越えた疲れがたまったのだと思った。翌朝、医者を伴って姉の婚家に着いてみると、姉は医者を待ちきれずに死んでいた。葬式の晩、わかさまに口寄せを頼むと新仏が出て、「山越えの医者たのみ、ごくろうだった。そなたの懐まで逢いに行ったのがわかったか」と語った。町で寒気を覚えたのは、ちょうど姉の死んだ時刻であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。