山中温泉の湯治客を揺さぶった母の死
どんな伝承か
明治四十五年七月三十日、明治天皇が崩御した日の話。報告者の祖母は、天皇がお隠れになったと娘から聞き、床の間の掛け軸に向かって涙を流したが、その夜半に容体が急変し、翌三十一日の夜明け前に亡くなった。叔父の安治郎は数日前から友人と二人で加賀の山中温泉へ湯治に出ていたが、その夜中、何者かに肩や腕を強く引かれ、早く帰れと言わんばかりに揺さぶられた。隣に寝ていた友人も驚いて声をあげた。三十一日の朝早く郷里の江州から母の死を告げる電報が届き、急いで帰ったものの、死に目には会えなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。