蚊帳の隅で語り合う息子と夫の声
どんな伝承か
神奈川県横須賀市の女性(山口ハナ)が語った話。昭和二十年八月初め、夏のことで蚊帳を吊っていた。女性が起きて蚊帳を半分落とし用事をして部屋に戻ると、蚊帳の隅からボソボソと人の話し声がする。何度もそうしたことがあり、不思議に思って耳を澄ますと、七月七日に病死した息子と、出征している夫の話し声のようだった。それから間もなく夫戦死の公報が届いた。あの頃、死んだ二人の魂が家へ帰ってきていたのだと女性は思ったという。現代民話考所収、納所とい子採録。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。