誰も通らぬ下水のふたの音
どんな伝承か
昭和二十年ごろのことである。知人の父が入院し、母は付き添いで家にいなかったので、姉妹二人で留守番をしていた。その家の小路に入ってくるには下水のふたの上を歩くことになるのだが、誰も来ないのにそのふたが鳴った。何度も鳴るので二人で確かめに出たが誰もいない。二晩そんなことが続いた二日目に、父が亡くなった。その晩からは歩く音がまったくしなくなり、今でもあれは父だったと姉妹は話し合っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。