父の話をした矢先の危篤の報せ
どんな伝承か
昭和五十二年五月二十六日のこと。長男の文雄は当時、三田の聖徳短大の事務局に勤めていた。昼休みに同僚と雑談していると、話がなんとなく父親のことに及んだ。同僚たちはみな父を亡くしており、井上さんはいいな、まだ親父さんもおふくろさんも元気なんだろう、と言われた。文雄は軽い気持ちで、おかげさまで、ただ今は父が心臓を悪くして入院していて、と答えた。その言葉が終わらぬうちに、父危篤の電話が入ったのである。あのとき図らずも父の死の話題が出たことが、今でも不思議だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。