ツゲの寺の夜に来た亡き坊や
どんな伝承か
長野県下水内郡栄村の風習として、人が亡くなると寺への知らせに必ず二人一組で出向いた。四十年ほど前の春、小学校に上がる前の子どもが亡くなり、話者は親類の常松と二人で知らせに出かけた。まだ雪の残るなか、マントを着てわら靴を履き、亡くなった子の枕元で「今日お寺へ行くから一緒に行こう」と呼びかけてから出発した。菩提寺は船山の竜言寺で、上結束から見玉を経て向かった。その晩、寺に泊まっていると、夜十一時ごろ、足の方から何かが押さえてくる感触があり、明け方には亡くなった子が抱きついてくるような手ごたえがあったという。夢だったが、亡くなった子が一緒に寝ていたような気がしたと語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。