かげ膳の水が凍ると届く戦死
どんな伝承か
戦争中の話である。語り手の家は山奥の一軒家で、田を作る頃には三か月から半年、手間取りが泊まり込んで働いた。手間取りは二十歳前後の若い男ばかりだったので、仕事が終わらないうちに召集された者もいた。母は戦争に行った兄や手間取りの若者たちのために、毎日かげ膳を上げて拝んでいた。これは兄ちゃんの、これはしんぞうの、と一人ずつ名を言いながら拝むのである。何人分かの膳のうち、翌日見ると水が凍っているものがあり、その者は必ず戦死しているのだった。寒ければ全部凍るはずなのに、一つだけが凍る。兄のときも、あんちゃんの水、凍みるなや、と言っていたが、やはり三か月ほどして戦死の公報が入った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。