馬が進まぬ夜道に現れた女
どんな伝承か
鹿児島県大島郡徳之島町での話。今から五十五年ほど前のこととして、語り手が父から聞いた。年の晩に兄が井之川から帰ってくる際、易者に今日は帰るなと言われたのに、若いものだから帰ってきた。馬に乗って帰ったが、井之川の近くのクンマントーという所で、いくら追っても馬が前に進まない。仕方なく馬から降りて曳いて行くと、女の姿が見えた。その女の後からついて行くうち、やがて姿が見えなくなった。そこで馬に乗ると今度は歩き出したので、走って帰った。家でもそんな予感があったらしく、すぐに塩を持って迎えてくれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。