同郷の中尉にせがんだ煙草
どんな伝承か
高知県高知市朝倉の話。昭和二十年の終戦も近い頃のことである。徴用で兵隊にひっぱられて高知の朝倉の連隊へ行った。新兵の田村のおんちゃんはタバコがのみたくてたまらないが手に入らない。ところがその連隊に同じ北川村出身の桶口中尉がいると知って探して行き、あた兄よお、タバコくれと言うと快くくれた。それから時々もらいに行ったが、あるとき人のいない時に呼ばれ、田村、人のおらん時はかまんけどねや、人のおる時は、あた兄はやめえよ、と言われたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。